シカゴ日本人会の歩み
「 発足の火種 」
1987年10月
苅田シカゴ総領事と重富シカゴ日本商工会議所専務理事から生(き)の日本文化を当地で継承し紹介や地域社会に貢献し、次に日本から来る人たちの最初の「手足」・「口や耳」となるよう期待された。
1988年2月 苅田教室開講(シカゴ日本国総領事)
有志が集い世界情勢、日米の政治経済などを聴講した。
参加者:伊勢田、後藤、八馬、木全、北澤、荻野、千代、坂本
「 設立に向けた動き 」
1990年2月 13名により有志会が発足
新一世による新しい組織の必要性を諮るため、月1回会合を開いた。
参加者:伊勢田圭子、後藤美郎、原コーリン、星名修治、木全義二、正木良樹、荻野敏雄、坂本則夫、千代慎子、谷本武士、上原将、上原敏子
1990年9月
既存の日系各組織の活動内容、組織の目的、運営状況などについて、各組織の代表者に訪問面談または有志会に招待し、有志会が求める設立趣旨が存在している否かを認識するため、2年を費やし、新組織を設立するか、または既存の組織に入会し改革を試みるかのいずれかを決断することにした 。
1991年4月 本田氏(前日米評議会 会長)の講話の一部を以下に掲載します:
- 1890-1910年:日系一世による米国移住期
- 1941年時点:一世の平均年齢61歳、二世の平均年齢21歳
- 1930年:JACL設立(本部:サンフランシスコ)
- 1945年:JACLシカゴ支部設立
- 共済会(Mutual Aid Society)日本人墓地
- 定住者協会(JASC)日系人強制収容所からシカゴに移った日系人で結成
- 平和テラス Long Term Nursing Homeの建設
- 1964年:シカゴ日系人会発足
- 日米評議会(CJAC)自身の活動はなく日系諸団体を援助。1946年当時、日系団体が16団体あった。
1991年5月 増田・舟井法律事務所の舟井氏から会の活動について次のアドバイスがあった:
- 目的を明確にしてMissionの作成をすべき。
- 他の日系団体と競合してはならない。
- 日米評議会に代表を送ること。
舟井氏の事務所から発起人の一人として原コーリン氏が推薦された。
1992年6月 森光アーサー夫妻による講話の要点を以下に記します:
- 一世の日系諸団体における過去の活動は一貫して差別との戦いであった。
- 「日本叩き」(Japan Bashing) に対して日系企業に代わって如何なる対応が可能かとの問いに、第二次世界大戦を通して米国に忠誠を示した日系市民の自信と意気込みについて話された。
1992年8月 内本忠氏(シカゴ日系人会会長)の講話の要点を以下に記します:
- 日系人に対する米国民からの排斥思想により就労、就職、借家などの差別を受け、その対処に奔走した。
- 無職となった日系人高齢者の救済措置として、自身が経営するメール配信の仕事を斡旋した。
1992年2月 森光アーサー氏(シカゴ定住者会理事長, JASC)および南部勝氏(専務理事)の連名で下記の要請書が届く。以下にその一部を記します:
「近年に至り、定住者会の財政基盤を支えて来た日系人が高齢化する一方、三世・四世は財政的にも、また民族的な自覚という点においても、まだ定住者会の財政状態に寄与するに至っていない」。(三世・四世の民族的自覚という言葉が新組織設立を決定づける動機となった)
10数名のシカゴ在住の長老および各会のリーダーの方々の講話を聴き、太平洋戦争中に日米の狭間で、強制収容など大変なご苦労をされたにもかかわらず、強く生き抜き、敗戦後も排斥や差別を受けたなかで、日本民族の誇りを常にもち続けた先達者の強い意志に対して、有志会一同はあらためて感謝と尊敬の念を心に刻みました。
幸いにも、有志会メンバーは戦後教育を受け、敗戦後の復興景気と日本経済の発展に伴い、米国派遣社員や留学生などの移住者が増加する傾向にあるものの、在米一世・二世の年齢を考慮すると、この時点において、新たな日本人の会を設立する節目だとの結論を得た。
「 生みの苦しみ 」
1992年10月 発起人会を立上げ毎月1回の例会で本格的に設立の準備に着手した。
発起人名:伊勢田圭子、後藤美郎、原コーリン、星名修二、木全義二、正木良樹、荻野敏雄、坂本則夫、千代慎子、谷本武士、上原将、上原敏子、上原克三
1. 会の必要性や目的などを話し合う:
- 日系人の諸活動にも参加できるのではないか。
- 日系人はシカゴ市内に、また新一世の多くは郊外に居住し、会合などで不都合が生じる可能性がある。
- 日系諸団体は後継者の問題を抱えると聞く。
- 日本人の感性を維持しつつ、米国の地で人生を楽しみたい。
- 新一世同士の情報交換の場が必要。
2. 次の事項についても確認した:
- 会員は日本語で意思疎通ができる移住者
- 会員間の互助、新一世の地位向上、地域社会への貢献
1992年11月 発起人会の決定事項
- 名称を ”Mid America Japanese Club”(MAJC)とした。既存の日系団体と競合しないよう「シカゴ」・日本」・「日系」などの名称は避けた。また日本民族として意識を維持する観点から日本語を当会の正式言語とした。
- 以下の委員会の設置を決めた。
- 定款の作成案:正木、木全、荻野
- 非課税法人申請案:伊勢田、千代、上原(敏)、原コーリン
- 会員募集要項案:星名、坂本
- 活動項目案:後藤
1992年12月 各委員からの提案された案件を検討した:
- 伊勢田氏から非営利団体(Non Profit Organization)の設立要領が説明された。
- 付随定款案について意見交換をおこない、会の目的や入会手続きなどの項目で若干の修正と追加をおこなった。未検討の項目は、起草者である正木、木全、荻野の各氏宛に次回までに意見書を提出するととした。
- 活動項目について後藤氏から提出がされ、参加者から強い賛同が得られた。
- 会員募集要項について、坂本氏からライオンズクラブ、ロータリークラブ、20世紀クラブ、JASC、仏教会などの調査報告があり、次会までに坂本、星名両氏から会の方針を書面で提出することとなった。
1993年1月
1. 定款案に関する主な変更点:役員・理事の選任要領と任期副会長の数を確認し、委員会を部会とした。
2. 会員募集を推進するため委員会を編成し、委員長を上野氏に依頼した。
3. 役員の選任については出席者が互選で次の役員を選出した。寄付金
- 会長:荻野敏雄
- 副会長:伊勢田圭子、正木良樹
- 専務理事:正木良樹(副会長兼任)
- 会計担当役員:木全義二
- 常任監事:上野克三
理事の選任については発起人全員が理事に就任することとした。
- 後藤美郎 (後藤デストリビューション)
- 原コーリン (増田・舟井法律事務所)
- 星名修二 (エス・エイ・エレクトロニクス)
- 伊勢田圭子 (乾杯レストラン)
- 木全義二 (木全パーソナル)
- 正木良樹 (センチュリー21)
- 荻野敏雄 (エクストン・コーポレーション)
- 坂本則夫 (オリエンタル・プリンテング)
- 千代慎子 (ジャパン・ブック・センター)
- 谷本武士 (本田・アンド・アソシエ―ション)
- 上原将 (ミッドアメリカ誌)
- 上原敏子 (上原アカウンティング)
- 上野克三 (坂田パール)
4. 寄付金
伊勢田、後藤、星名、木全、荻野、上野(敏)、上原(将)、千代の各氏から会に対して当面の運用資金として合計700ドルの寄付があった。未払いで寄付のできる方は木全会計担当役員に払い込んでいただくこととした。
1993年2月 第1回 理事会
1. 役員会からの報告
事前に役員会を開き、検討用の添付資料に沿って理事会の開催が立案されたとの報告があった。
2. 理事の追加選任
荻野会長から理事の名簿に発起人の一人である大村氏の名前がないため、理事に追加してはどうかとの提案があり、出席者の賛同を得て同氏を理事に選任した。
3. 会員募集
担当の坂本理事が会発足の案内文(一部修正)に入会申込書を添え2月末までに印刷物を理事に渡こととした。各理事は縁故募集を開始し、1人当たり10名以上の会員獲得を目標とした。
4. 事業計画
- 文化福祉部会:千代部会長
- 教育部会:上野部会長
- ビジネス部会:星名部会長
- 行事部会:後藤部会長
- 渉外担当:坂本理事
- 生活部会:谷本部会長
5. 他の組織機能 会計担当 上原(敏)理事
- 会員募集委員:上野委員長、星名理事、坂本理事(この委員会は当会発足時にのみ活動をおこなうため、目的に達すれば渉外機能へと移行する。)
- 事務局の業務:伊勢田副会長(当面は会員名簿作成と会員通知書の発行に限定した業務をおこなう。)
6. 関係諸団体へ設立の報告と挨拶
定住者協会、JCCC会頭、シカゴ日系人会、日米評議会、シカゴ日本国総領事、日本人共済会
7. 会の連絡窓口
当面は外部および会員からの問い合わせ窓口は荻野会長(Exton Corpオフィス)が担当し、内容に応じて担当の各部会長に振り分けることとした。
8. 会の登録
正木専務理事より原弁護士に邦文の付随定款を渡し、英文の会則(BYLAW)の作成を依頼した。さらに英文と邦文の定款(ARTICLES OF INCORPORATION)も作成し関係当局提出することで、迅速な登録手続きが期待されるとの報告があった。
9. 設立総会
第1回設立総会の開催予定日を1993年5月5日とした。また当会が実施する行事については、行事部会が立案し、理事会で検討・承認することとした。
以上の項目が理事会で承認された。
1993年3月 第2回 理事会
1. 登録手続き:原理事(弁護士)から以下の報告があった:
- 当会(MAJC)は1993年3月12日に設立された。
- Federal ID No.を取得するためIRSに登録した。
- IRS TAX EXEMPTの資格を取得する手続きとして会の年間予算を今後5年間に渡りIRSに提出しなければならない。
- 会費収入:寄付金などはIncomeにならない。
2. 関係先への挨拶:荻野会長が関係団体を訪問し、当会設立の趣旨を説明した。その際、次のような反応があった。
- JCCC(大橋会頭): MAJCの設立に理解と興味を示された。
- シカゴ日系人会(内本会長):後継者をMAJCから出して欲しいとの申し出に加え、1993年の「さくらまつり」への参加を要請された。
- シカゴ総領事館(田沼総領事):現地の団体には参加しない方針を取っている。ただし、会の活動に役立つことはやっていきたい。
- 共済会:キリスト教および仏教信者を含めた共同墓地を経営しており、豊富な土地と資金を保有している。
- 定住者協会(森光理事長、南部専務理事):会の趣旨に賛同され、日米評議会への参加を推薦された。また日本文化や芸術を日系二世に教えて欲しい。さらにNURSING HOMEにボランティアを派遣して欲しいとの要望があった。
- 日米評議会(藤本会長):当面、MAJC代表者がゲストとして評議会の会合に参加することを歓迎する。
3. 会員募集の案内掲載
- JCCC月報: 坂本理事より掲載を依頼
- 読売新聞:千代理事より募集案内の掲載を依頼
- ヤオハン:千代理事より告知板に募集掲示を依頼
1993年4月 第3回 理事会
1. 役員会からの報告
3月28日、4月2日、4月20日に開催された役員会で審議された次の項目が理事会に提案され承認された:
- 第1回 設立総会の開催要領(案)
- 日時:1993年6月13日(日曜日)
- 場所:乾杯レストラン
- 部会活動計画(案):文化部福祉、生活部会関係
2. 会員募集状況
入会申し込みのあった会員は約50人の見込み。会員応募の状況を把握するため上野理事に情報提出することとした。
3. 日系諸団体への参画
千代理事が日系人会内本会長と面談し、本会及び定住者会への協力をおこなうには、本会の内部固めを優先する必要があるため、将来の課題とするとの発言があった。
4. 新理事の選任
役員会から指名により藤川定之氏が選任された。
5. 生活部会長
部会長により藤川理事が指名された。
6. 会員総会
総会の開催案内を5月30日までに配布する。同時に、開催案内をミッドウエスト誌に依頼し掲載することを決めた。
1993年5月 第4回 理事会
1. 役員会報告
5月5日開催の役員会で教育およびビジネス部会の活動計画を検討するとの報告があった。
2. 会員募集状況
申し込みをおこなった会員は現在46名で 総会開催までに67名に達すると予想された。
3. 総会実施要領
- BYLAW:総会の開催時に希望者にコピーを渡す。各理事にも一部配布する。
- 予算案:役員会→理事会→総会の順で審議・承認を求る。
- 総会における各理事の分担を設定した。
- 総会の進行訳:後藤理事が総まとめを担当し、詳細は関係理事で協議する。
4. 部会活動
- 生活部会:部会長の藤川氏より資料による活動の要旨が説明され、基本的に了承された。
- 教育部会:部会長の上野氏より資料で説明があり、活動の要旨が承認された。
- ビジネス部会:部会長の星名氏から口頭で説明があり、Small Business 対象のセミナーを開く意向が示された。
- アンケートで会員の希望を聞き、活動に取り入れる方針を確認した。
5. 部会活動の報告(設立総会)
各部会長は活動の要旨をまとめ、総会当日に各会員に配布することとした。
1993年6月 第5回 理事会
1. 役員会からの報告
5月27日の役員会で各部会の活動要旨、本年度予算、総会当日配布する資料について審議したことが報告された。(これらの結果は理事会に以下の審議項目で提案された)
2. 会員募集状況
申込件数は6月8日現在65名、総会時には72名見込み。
3. 1993年度予算
1994年3月時点での予想会員数を120名とし、役員会が作成する予算案を修正した。
4. 部会活動
総会の際、各部会長からの説明資料に活動内容を記載し配布する案が出され承認された。
5. 会員総会の実施要領
当日配布資料(案)が提出され了承された。更に実施の細部を検討するため後藤、正木、荻野、千代の各理事が6月10日に打ち合わせを持つことにした。
6. 上原将理事の書簡
新聞記事の案内掲載や広告掲載とそれに伴う費用について、会長より経過報告があった。次回理事会で上原氏の出席を得て話し合うことにした。
1987年10月から設立に向けた活動を開始し、その後5年8か月もの歳月を重ね、挫折する事もなく新一世として存在意義を問い、熱い想いを胸に抱き、さまざまな試行錯誤の末、シカゴ日本人会(仮称:Mid America Japanese Club, MAJC)の旗揚げし、記念すべき設立総会を迎えた。
当会の活動が末永く続くよう念じ、同時にシカゴの各日系団体から学んだ点を基に、発起人および理事一同は下記の点を当会の原則とした:
- 日本民族の心と自覚を失わぬよう当会の使用言語は日本語とする。
- 常に新しい風を吹き込むため、理事・役員の任期を2年とする。